耕作放棄地は”未来の資源”になれるのか?──三豊から考える、新しい土地の使い方

🌍 地域と未来経済

最近、身の回りで「使われていない土地」に目が止まることが増えた。畑が草に覆われ、かつての風景が少しずつ変わっていく。放置された土地は問題と見られがちだけど、視点を変えてみれば地域の「資源」になり得る。いま土地の“使われていない時間”が、実は地域の未来を左右する可能性をも秘めている。今回は三豊の小さな現場から、土地の再編集の可能性を探ってみようと思う。

放置された土地は本当に”無駄”なのか?

車で田舎道を走ると、草が背の高さまで伸びた畑を見かける時がある。以前は手入れされていたであろう田んぼに、今は雑草の勢いが止まらない。今、日本全国で耕作放棄地が増えているのは、高齢化や後継者不足が主な理由。

数字で見ると、その規模は想像以上だった。農林水産省の統計によると、全国の耕作放棄地は約40万ヘクタールもあるらしい。これは香川県の面積の2倍以上に相当する。三豊市でも例外ではなく、年々その面積は広がっていると思われる。

見た目は「空き」でしかないかもしれない。だけど、まず忘れてはいけないのは、土地には「場所性」と「歴史」があるということ。そこには水路があり、日当たりがある。地域との関係性もある。そして何より、かつて誰かが汗を流して耕していた記憶がある。

今どんな状況であろうとも、人と関わることにより土地は再び価値を発揮する余地を持っている。

使い方次第で”資源”になる理由

放置地は単に「農業ができなくなった土地」ではない。むしろ「まだ役割が見つかっていない土地」と捉えるべき。

まず押さえたいのは、耕作放棄地の活用方向は大きく4つに分かれるということ。

小規模な地域農園やコミュニティガーデンの場

週末だけ野菜を育てたい都市住民や、定年後に農業を始めたい人たちにとって、耕作放棄地は格好の場所。大規模農業には向かなくても、小さな区画に分けたシェア農園ならまだまだ可能性はある。

エネルギーの受け皿(条件次第)

日当たりのいい放置地は、太陽光発電の適地になる場合が多々ある。最近では「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」という、農業と発電を両立させる取り組みも広がってきた。条件次第だが、地域の自給エネルギー源になり得る。

教育・福祉・イベントの場

子どもたちの農業体験学習、障がい者の就労支援の場、季節ごとのマルシェやイベント会場。人が集まる「場」としての価値は、むしろ従来の農業より高い場合もある。

小規模ビジネスや直売所の拠点

小さな直売所、加工場、農家レストラン。「生産の場」から「販売・交流の場」へと機能を転換させることで、地域経済の小さな拠点になる。

技術や仕組みが進めば、面積が小さくても十分に活用できる。
つまり、“使い方の多様化”こそが鍵になる。

制度と支援が追いつけば回り始める

ただし、現実的な課題も多い。

・相続で所有者が分散している
・農地法の制約が厳しい
・地域の合意形成が難しい
・整備費用が負担になる

これらはどれも一筋縄ではいかない。

だからこそ、行政や地域組織が柔軟に動ける仕組みづくりが重要になる。

例えば:
農地の一部を短期的に地域利用へ開放する制度
再エネ共生を前提にした地域協議会の設置
試験的プロジェクトを進めるための小規模助成制度

制度は一足飛びには変わらない。
だからこそまずは「小さくやってみる」実験を許容する枠組みが必要。

人をつなぐことが最も重要

土地を動かすのは制度より先に「人の関係」。

地域の当事者、若手の参入希望者、外部事業者、消費者……
立場の異なる人たちがゆるくつながる場が必要になる。

● 週末だけ手伝う「時間の出資」
● 少額から参加できる「小口の出資」
● DAO やコミュニティ通貨による“関わりの可視化”

完璧な計画ではなく、まずは話をする。その中から小さな実験が生まれ、成功も失敗も共有され、
少しずつ形になっていく。

この“プロセス”こそが地域の財産になる。

三豊から描く一つの道筋

小さな地域では、大きな計画より「小さな成功」が肝心。

まずは一カ所の実験区をつくることから始めてはどうか。地域住民の合意のもと、小規模なコミュニティ農園や季節限定イベント、直売の拠点とか。失敗してもいい。むしろ失敗から学ぶことの方が多い。

成果が出たら、スケールしていく。うまくいけば「あそこができるなら、うちも」と連鎖が生まれる。この“小さな成功の連鎖”こそが、土地に新しい役割を与える原動力になる。

三豊には、まだまだ使える土地がある、ただ眠っているだけ。その土地を「負債」から「資産」に変えるには、視点と仕組みを変える必要がある。

土地は、人が関わることで息を吹き返す

土地は、人の手が離れた瞬間から衰えるように見える。でも、人の想いさえ戻れば、またすぐに息を吹き返す。

放置地をただの“負債”にせず、地域の資源へ変えていくには時間も工夫も必要になる。だが、小さな一歩が連鎖して、やがては地域の景色を変えていく。

三豊の現場から、そんな実験を少しずつ積み重ねていきたい。


次回は、実際に耕作放棄地を活用している全国の事例を調べながら、三豊でも使えそうなアイデアを探っていく予定。

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