三豊の小さな農家がつぶやいた。
「カード決済の手数料、毎回3%ってやっぱり痛いな…」
そんな現場の悩みに、Web3の波が静かに届き始めている。
銀行を通さず、1秒で届く“デジタル円”──JPYC。
これは、ただの新しい決済じゃない。
地域でお金を回す力を、もう一度自分たちの手に取り戻すための仕組みだ。
手数料ゼロ・即時送金・法的にクリーン。Web3の波が、いよいよ地域の経済を動かし始めた。
お金が止まると、地域も止まる
「売上はあるのに、手元にお金が入るまでが遅い」
「手数料が高くて、小規模販売では利益が残らない」
農業の現場で聞こえてきそうな声。
いくら想いのある事業でも、”お金の流れ”が遅いと、活動の循環が止まって負のスパイラルに…。でも今、日本の決済の仕組みそのものが変わり始めているのは希望の光。
2025年10月27日、日本初の円ステーブルコイン「JPYC」が正式に発行された。金融庁に認可された電子決済手段として、ほぼ手数料ゼロで送金できる「ブロックチェーン上の日本円」だ。
「ステーブルコイン?ブロックチェーン?」と思いましたか?心配いりません。要するに、スマホで使える“新しい形の円”が登場したということ。難しい話は後回しにして、まずは「これで何が変わるのか」から見ていくことにしよう。
JPYCって何?──”円のデジタル版”が生まれた

JPYCは、1JPYC=1円で価値が連動している。つまり、1万円を持っている感覚と、1万JPYCを持っている感覚は基本的に同じ。ただ、使い方がちょっと違う。
銀行口座を介さずに、スマホのアプリを使って、個人や企業同士が直接”デジタルの円”をやり取りできる。まるでLINEでメッセージを送るように、お金を送れるイメージ。
その特徴はこう。送金手数料は数円から数十円程度、送金スピードは最短1秒、そして日本の法律にちゃんと準拠している。
クレジットカード決済で3〜5%かかっていた手数料が、ほぼゼロになる。ネット決済で月に100万円売り上げる農家さんがもしいたら、年間で36〜60万円の手数料が浮く計算になる。
10月27日の正式リリースから6日後の11月2日にすでに発行額1億円を突破、今後3年で10兆円規模の発行残高を目標に掲げている。世界のステーブルコイン市場は2030年に約600兆円に達すると予測されていて、日本円がその10%を獲得できれば60兆円規模の市場になる。数字だけ見ると壮大だが、要は「これから伸びる仕組み」だということ。
農業×JPYC──「お米をデジタル円で売る」時代へ

すでに農業分野でもJPYCを使った動きがスタートし始めているらしい。
「お米をJPYCで販売する」という実証実験が進んでいるらしく、消費者がスマホで直接支払い、その記録がブロックチェーン上に残る仕組みが試されているという。
この仕組みのいいところは、まず銀行振込を待たずに即時入金できること。手数料も極小で済む。さらに、NFT(デジタル証明書のようなもの)を購入証明書として使えば、法律的な問題もクリアできるんだとか。
まさに”デジタル直販”の第一歩。三豊や地方の直販農家がこのモデルを使えるようになれば、地域内でお金が循環する経済圏を作れるかもしれない。
なぜ今、農家がこれに注目すべきなのか

決済コストが劇的に下がる
「ある農家が、3%の手数料に悩んでいた──」
従来のクレジットカード決済では、売上の3〜5%が手数料として引かれる。これが非常に大きい訳だが、クレジット決済を導入しないとネット決済では離脱率が極端に大きくなってしまうから導入せざるを得ないところがあった。これがほぼゼロになるのだから、特に薄利多売のビジネスや小規模事業者にはかなり大きなインパクトがある。
ブロックチェーンを使う際のガス代(ネットワーク利用料)は発生するが、手数料の安いネットワークを使えば数円から数十円で済むので、買い手・売り手ともに非常に有り難い。
新しい顧客層にリーチできる
Web3に詳しい人たちや、暗号資産を持っている層は、従来の決済よりステーブルコインでの支払いを好む傾向がある。JPYCは「日本円と同じ価値」という安心感があるから、暗号資産初心者にもハードルが低い。
まずは機関投資家や暗号資産を持っている人たちから広がり、4〜5年で一般層にも普及していくと見られている。早めに取り入れることで、新しい顧客層を掴める可能性がある。
すべての取引が透明で、自動化もできる
ブロックチェーン上の取引はすべて記録される。これは会計処理の自動化や、取引の証跡管理に役立つ。「誰が、いつ、いくら支払ったか」が一目瞭然だから、トラブルも減る。「振込されていません」「いつ振り込みましたか?」とか皆無になる訳です!
将来的にはAIが自動で決済を処理する仕組みの基盤にもなると期待されている。業務効率化の観点からも、今のうちに慣れておく価値はありますね!
気をつけておきたい法律の話
JPYC決済を導入する前に、最低限知っておきたい法律のポイントがある。難しい話だけど、ざっくりみるとこんな感じ。
景品表示法の罠
「特別価格!」みたいな表記をする場合は注意が必要。「通常価格3,000円 → JPYC特別価格1,000円」といった表示は、過去8週間のうち4週間以上、実際に3,000円で売っていた実績がないと使えないようだ。
JPYC販売を新しく始める場合、この実績がないから「通常価格」表示は避けるべきで、単純に「JPYC決済価格:1,000円」と書く。
前払式支払手段に該当しないように
「5,000円分の商品購入券をJPYCで販売」みたいな形式は、法律上「前払式支払手段」に該当する可能性があって、これに該当すると面倒な規制がかかってしまう。
回避するには、即時決済・即時配送の形式にすること。NFTを使う場合も、NFT自体は「購入証明書」として扱い、商品との交換は別の手続きにすれば大丈夫。
消費税の扱いは意外とシンプル
JPYCは法律上「支払手段」として扱われる。だから、商品を売るときは普通に消費税がかかるが、JPYC自体を受け取ること自体は非課税。
従来の暗号資産(ビットコインとか)だと消費税の処理が複雑だったが(JPYCが発行された大きな理由がここにも!)、JPYCは「円と同じ扱い」だから処理が簡単になった。これは地味に大きなメリット!
DAOとJPYC──「信頼が回る経済」へ
DAO(分散型自律組織)という言葉を聞いたことがあるだろうか。簡単に言えば、「組織のルールをコンピュータープログラムで管理する仕組み」だ。
JPYCのようなステーブルコインは、このDAOに”お金の流れ”を加える役割を果たす。
たとえば、農業DAOのメンバー間で報酬を分配したり、地域プロジェクトへの資金配分を投票で決めたり、共助基金を透明に運営したり。これまでは「理念だけ」で動いていた共助活動が、ちゃんとお金が回る仕組みとして機能し始める。
アグリサークルが耕すのは「信頼と循環」
JPYCの登場は、ただの決済の進化じゃない。これは「地域の経済をもう一度、自分たちの手に取り戻す」ための道具。
アグリサークルが目指しているのは「共助・協働・共創」の世界。そこに流れるのは、データでも金でもなく”信頼”という、いわば血液みたいなもの。その信頼を支える新しい血管として、JPYCのような仕組みが静かに芽を出していることは嬉しい限り。
ただ、農業DAOにとってJPYCの登場は、“経済の血流”を整える始まりに過ぎない。
これからは“共助が循環する経済”をどう育てるか──
それが、アグリサークルが耕していきたいテーマです。
これからの農業は、「土を耕す」だけじゃない。「お金と信頼の流れ」を耕していく時代に入っていくぞ!

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